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ボア vs パイソン  ラウンド1.

水面下で繰り広げられる戦いとはこういうことをいうのだろうか・・(何か使い方間違ってる
かもしれないけど・・)
バチバチと火花が散っているように見えるのは私の気のせいだということにしたい。

「密、どうしてお前がここにいるのかな?いや、そんなことよりもそこをどいてくれないか?」

「い・や。ですね。兄さんこそこんな所で一体何をやっているんですか?」

あぁもう二人とも・・・
そんな傍から見ても分かるようなドス黒いオーラを醸し出しながら不敵な笑みで笑うのはや
めなさいよっ・・
道行く人たちが目も合わさずに避けてくじゃない!!

・・・といいたい灯だったが、この静かなる闘いにわざわざ命を捨ててまでも割り入っていく勇
気は残念ながら持ち合わせていなかった。
今はこれ以上状況が悪化しないように冷や汗を垂らしながら見守ることしか出来ない。

「何をやっているって・・灯さんと食事をしに行く所だよ。」

「へぇ・・・灯さんと二人で食事ねぇ・・」

あぁぁぁぁぁぁぁ・・・・なんでいきなりそんな目でこっちみるのよぉ・・・

灯は密の何ともいえぬ視線に耐えかねて金魚のように口をパクパクとさせる。
そんな二人の様子を見て司がふむ・・と小さく唸った。

「灯さん。」

「うぇ?・・あっはい、何ですか司さん。」

司の声に金縛り(?)から脱出した灯は顔を上げる。

「ちょっとここで待ってていただけますか?」

「えっ?えぇわかりました。」

「密。こっちへきなさい。」



司は密を連れ立って(というかむしろその様子は引きずっていくようにも見えたが・・)灯の視
界に入らない所に移動した。
ばっと密がその腕を振りほどく。

「まったく・・・お前も大人げが無いな。―・・つけてきただろう?」

呆れたように溜息を漏らす司に密はむっと眉を顰めた。

「それをいうなら兄貴こそ・・・悪いけど邪魔しないでくれる?俺本気なんだけど。」

剣呑な光をたたえた瞳に動じることも無く司はふっと笑った。

「それはお前だけに限ったことじゃないさ。」

「・・・・・・・・・・・兄貴年下に興味ないだろう。」

「さぁ?どうだろうな。灯さんは可愛いから。」

「司兄さんっ!!」

世間でいう所の”大人の余裕”というものをちらつかせる司に密は苛立ちを募らせる。

「―・・とにかく。彼女は絶対に渡さないからな!!」

普段”優等生”で通している彼の様子とは裏腹に感情を高ぶらせる姿は年相応の姿だとおも
い思わず苦笑がもれる。

「密、征服欲が強すぎる男は嫌われるというものだよ?」

「五月蝿いっ。このロリコン!!」

「はいはい。」

さらりと受け流す。

(ふむ・・・ロリコンっていっても8歳ぐらいしか年が違わないんだがな・・25と17はギリギリセーフっ
てとこじゃないのか・・?)

と心の中で抗議はしてみたもののそれをいうと”大人の余裕”的態度が崩れてしまうような気
がしたのであえて胸のうちにしまった・・・というのはここだけの話。

「さて、どうする、密?今回は私のほうが先約なんだが?それとも、強引にいって印象を悪くし
てみるかい?」

「っ―・・」

「大丈夫だよ。今回は食事をするだけさ。食事がすめばすぐに帰るよ。」

「”今回は”!?」

聞き捨てなら無い単語に思わず密が突っ込んだが司は(細かいやつめ・・と思いながらも)それ
をスルーした。

「どうする?」

「・・・・・・・・・わかった。帰るよ。でも―・・」

渋々と頷く密。
その双眸が上向きにすっと細められる。

「俺は本気だ。司兄さんがどういうつもりなのかは知らないけどふざけた真似したら―・・ブチ殺
す。」

・・・物凄い形相で実の兄に対して中指を上に上げている。

(こんな密を学園の生徒が見たら卒倒するだろうな・・)

そんな下品な言葉何処で覚えてきたんだい・・・ということよりなによりも密の猫かぶりの姿しか
知らない学園の生徒達に見せてやりたいという衝動に駆られたが秋宮家の威信に関わること
なので(それもそれで面白そうだが・・こいつなら恐怖政治が出来るな)何とか理性で圧しとどめ
た。

そのまま密はくるりと背を向けるといってしまった。

「まったく・・・大人ぶっていても何時までも中身は子供だな・・」

苦笑交じりの溜息をつかずにはいられない。


                         *


「どうかしましたか?」

先程のやりとりを思い出して突然ふっと微笑を浮かべた司に灯が首を傾げて驚いている。

「いえ、なんでもないんですよ。―・・あぁそれよりもおいしいですか、灯さん?」

「はい、とっても!」

満面の笑みで灯はズズズっと・・・醤油ラーメンをすすった。

「それはよかった。」

「・・・でもなんか以外ですね・・・司さんがこういうの好きだ何て思いませんでした。」

目の前に座る司の前にも灯と同じ器が置かれている。
・・・・その中身は塩ラーメンだったが・・・

「ふふっ・・・以外ですか・・。フランス料理やイタリア料理でも食べてそうな雰囲気ですかね?」

「えぇ・・・」

ブランド物のスーツを着た美形の青年がおいしそうにラーメンをすすっている・・・・明らかに何か
がおかしい光景に灯は戸惑いを隠せない。
現に周りからもちらちらと視線が跳んでくる。
中にはお昼を食べにきたOLの黄色い声も混じってはいたが・・
二人がいるのは”高級店”・・・という名には程遠い何処にでもありそうなラーメン屋さん。
司がお薦めのおいしいお店があるんです。というものだからもっと格式のありそうな(いかにも肩
がこりそうな)お店に連れて行かれると思ったのだが・・・

「物凄く違和感があります。」

「ははっ・・よくいわれますよ。―・・あっすいません、お水下さい。」

「はいよっ!」

店のおじさんとも仲が良さげだ。
さっき店に入るときも親しげに話していたし・・多分常連なんだろう。

「ここのお店は麺が程よく固くておいしいんですよ。しっかり手作りですからね。」

隠れた穴場だそうな・・
嬉々として”ラーメン”を語る司に更に言い知れぬ違和感を覚えてしまった。

「よくこられるんですか?」

「えぇ。プライベートで外食するときはよくきますよ。」

仕事や付き合いではもっとしっかりとした・・それこそ三ツ星レストランなどへいくそうだが、私生活
においてわざわざそういう所にまで行きたくないのだという。

「肩がこりますし・・それにあぁいう所だと決まって知り合いに合うからいやなんですよ。折角の休み
だというのに余計な気遣いを回さなければいけないし。」

「結構大変ですね・・」

「えぇ大変なんですよ。」

にっこりと笑う司は当初のイメージとは大きくかけ離れた青年だった。

(結構親しみやすいというか・・・紳士的だし、これは相当もてるんだろうなぁ・・)

「ところで灯さん―・・」

「はい、何ですか?」

「密はどうですか?」

ぐっと思わず飲みかけた水を喉に詰まらせてしまった。

なんでいきなりその話になるかな・・・

「どっどうって・・・・・・・・・!?」

「最近積極的に灯さんに迫ってるみたいですが・・」

うっ。
思い出し思わず顔が赤らんでしまった。

確かに・・
”あの日”から密の行動が大胆になってきた・・・気がする。
所構わず王子様スマイルを振りまき”スキンシップ”を計ってくる・・
そのおかげで学校での周囲の反応は更に度合いを増し・・

「その様子ですと色々と苦労なされてるみたいですね。」

「はぁ・・・まぁ・・」

困ったように笑う司にどう反応を返したものかと悩みながらも灯も苦笑して応えた。

「あれは昔から一直線ですからねぇ・・からかうと本当に面白いですよ。」

ふふふっと笑う司。

(からかうって・・・・それはやっぱり兄弟だから出来るんじゃないかなぁ・・)

まず自分が彼をからかうことなんて出来ないだろう。
不可能に等しい・・

その考えが顔にでも出たのか・・司は大丈夫ですよ。と笑った。

「灯さんもそのうち密で遊べるようになりますから。」

さらりと笑顔で言うが、からかわれている方にとっては嬉しくない発言だろう。

さすがあのおじ様の息子で三兄弟の頂点に立つだけのことはある。
中々にこの人も曲者だと実感した灯だった・・