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こんなのってあり?2。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
脱力しきった・・・・・・・・・・・というのはこんな感じだろうか。
何をすることも無くただベッドの上に寝転がり天井を見上げるばかりだ。
ただ一つだけ頭の中に浮かぶ言葉がある。
訳ガ分カラナイ。
そう、うん。本当に訳が分からない。―・・何を考えているのか、密は。
あの後本当に灯は"実家"へと送り届けられた。
でもその場に密は同行せず、送り届けてくれたのは早田さんだけで、その早田さんも一言
"安心して暫くおくつろぎ下さい"とだけ残して行ってしまった。
突然帰ってきた娘を見て驚きを隠せない両親ではあったが何も言わず、何も問わずに家の
中へと迎え入れられた。
久しぶりに戻った実家の自室は(正月に帰省した以来だったが)何も変わらないままだった。
ただ少し物がなくなっているというか・・・・まぁ(強制的に)移動したのだからそれもそうなのだ
が・・
深い深い・・―とーっても深い溜息が出た。
(何か・・疲れたなぁ・・)
そっと無意識のうちに右手を口元へと運び、指先でその唇をなぞった。
(何が一体どうなっているのか・・)
本当に・・・・・・・・何なのよ・・・・・
冷静になって思い出してみれば腹立たしいことこの上ない。
実感はなかった・・けど確かに唇に触れたあの暖かくて自分のモノではない柔らかい唇の感触
は、ありありと思い出せる。
本来ならば思い出しただけで赤面し、暴れまわっているかもしれない。
―・・でも今は何だかそうする思考さえも麻痺している・・・・そんな感じだった。
唯一浮かんできた思いというか、湧き上がってきた感情は―・・なんていうか何だか非常に”モヤ
モヤ”としたものだった。
何かが胸の奥でつっかえてやるせない・・一体何なのかコレは。
わかんないわかんないわかんないわかんない・・・・・・・・
コンコン―・・
「灯ちゃん?入るわよ?」
返事を待たずに母親が入ってきた。
「何か・・食べる?」
「・・・・・・・・・・・いらない。」
「そう。」
暫く二人の間に沈黙が続く。
ふとベッドが軋んだ。
目線を足のほうへ動かすと母親が腰掛けている。
とても心配そうな顔でこちらを見ている。
「さっきね、雅人さんから電話があったわ。学校の方は2.3日公休にしておくよう手配したからゆっく
り休みなさいって。―・・ねぇ、灯ちゃん・・・ううん、なんでもないわ・・」
もう一度ベッドが軋む音がし、母親が部屋から出て行こうとする。
「ねぇ、母さん―・・」
その後姿に何気なしに声を掛ける。
「なぁに?灯ちゃん?」
再び振り返った母親の顔と口調はいつもと変わらないにこにこのほほんとしたものに戻っていた。
その切り替えの早さに軽く脱力感を覚えつつも灯はふと思いだしたことを聞いてみようと思った。
「私が小さいとき、雅人おじさまたちってよく家に遊びに来てたの?」
「えぇ、そうよ。アルバムあるけどみてみる?」
かえってきてからずぅっと黙りこくっていた娘が僅かにだが元気を取り戻したことが嬉しいのか意気
揚々と倉庫からアルバムを引っ張り出してきた。
「ほら、これが灯ちゃんでしょ。それでこっちが司ちゃん、晶ちゃん、こっちで灯ちゃんと一緒に水遊
びをしているのが密ちゃん。もうっ!!!四人ともか~わ~い~い~v」
・・・・・・・・・・・・すっかり自分の世界に浸ってしまっているね母さん。
次から次へといろんな昔話を(頼みもしないのに)語ってくれちゃってるし・・
しかし―・・
(やっぱ一緒に遊んだりはしてたんだぁ・・)
写真の中では無邪気な四人の子供達が楽しげに遊ぶ光景が何枚も写しだされている。
うぅむ・・・確かに遊んだことは事実のようだけど今一記憶がないなぁ・・・
しかもこの無邪気な―・・そう、その愛らしい容姿から三人とも"まるで天使のよう"というフレーズが
つきそうなのに・・・・・・・・・・・・・・・・・どこをどう間違えてあぁなってしまったのか・・
いや、容姿はとても素晴らしいものになっているのだろうが・・・・・まぁ・・・・・・・うん・・あれだよ・・
(ってわたしってばいつの間にか考えるべき方向が違うんじゃないっ!?)
「きゃ~!!みてみてぇvパパってばわか~いvいや~んv」
こらこらこらこら・・・・・・・・・
隣ではアルバム片手に愛でるべき対象物を変えた母親が奇声を上げている。
「かっ母さん・・お楽しみの所悪いんだけど・・」
止めなければ何時までたっても奇声を上げ続けるのだろう。
「あら?まだまだ見たりないのぉ?安心してvたぁっぷりあるからv」
違う違う違う違う。
何を勘違いしているのかまったく・・
心の中で激しく突っ込みを入れながら、何だかそんな母親の様子に一々突っ込みを入れる自分が悲
しくなってしまい軽く溜息をついてしまった。
ふと目線がさがり、先ほど押し付けられたアルバム一つ―・・偶然開かれていたページのある写真に目
が行く。
「・・・・・・・・ねぇ、これって・・」
「あぁそれねぇ。懐かしいわぁv灯ちゃんが幼稚園に入園した後すぐだったかしら?雅人さんが海外にいく
ことになってねぇ、司ちゃんたちも一緒に行くことになったのよ。そうねぇ~、そういえばあれ以来直接あっ
てなかったわ。それは空港にお見送りに行ったときの写真よv四人とも泣いちゃって・・可愛かったわぁv
特にねぇ密ちゃんと灯ちゃんが一番泣いててvもう思わずそのまま連れ去りたいぐらいに―・・」
最後の方は少々危険な発言になっているが・・・・・・・今そんなことにかまけている暇は無かった。
だって・・これって・・・・
写真に写る二家族。
特に沢山泣いたのだろう―・・顔を真っ赤にして互いの手をぎゅっと握っている二人の子供の両手首には
おそろいのリボンがまかれていて・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ってあああああああああああああ!!!!!!!!!!」
突然大声を出した灯に母親は思わず目をまん丸にしてビックリしている。
「あっ・・・灯ちゃん・・・・・?」
「うわぁぁ・・・・・・・」
思い出した・・・・・・・・かも。
っていうか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
これはやばいって。うん。私ちょとピンチかも。
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