ボア vs パイソン  ラウンド3.

玄関をでるとそこには・・・・


「やぁ灯さん。」


いた。いらっしゃいましたよ。

ありふれんばかりの笑みを撒き散らしながらタラシ一号・・・げふんっげふんっ・・・じゃなくて、密が
立っていた。


「あ〜・・ごめんね。何か待たせちゃったみたいで。」

「いえいえ、いいんですよ。どうせ晶兄さんが余計な道草くってたせいにきまってますから。」

・・・・・・・・・・・・・・えぇまったくもってその通りで御座いますよ。

まるで見てきたかのようなその(怖いぐらい)爽やかな笑顔が眩しいです密様。

その後に続いた"ふふ・・後でどう仕返しをしてやりますか"なんて楽しそうに発言したのはあえて
聞かなかったことにしておこう・・


「え〜と・・・それで?何か用だった?」

にっこりと密が頷いた。

「灯さん、今から僕とデートしましょう。」

「え?あっちょっと!?」

「さぁいきましょうね。折角の休日。外は晴天。これほどのデート日和はないでしょう?」

問答無用。といった形で密が灯の手を引っ張っていく。

「ねぇ!密!!ちょっと待ってってば―・・」

「灯さん。」

反射的に抵抗する灯に密が立ち止まりぐいっとその顔を近づけてきた。

「―・・いまここで僕にキスされるのがいいですか?それとも」

「わかりました!!もぅ何ていうか全力でお供させていただきます!!!」

赤面しながら早口でまくしたてる灯に密は満足そうに頷いた。

「それじゃ、行きましょうか灯さん。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あぁもうなんちゅうか好きにしてください。



                           *



「あれぇ?司兄さん今回はおとなしくしてるんだ?」

司は自室のPCの画面から目をはずすと、扉にもたれかかっている弟を視界に入れた。

「晶、ノックして入れっていわなかったかな?」

「したよ?司兄さんが仕事に熱中してただけデショ?」

そのまま部屋の中に入ってくると窓の外へと目を向けた。
司の部屋は二階にある。
広大な日本庭園を望むことも出来るが、今、晶の視界に入っているのは二つの影。

「いいの?」

「まぁ"大人の余裕"ってやつだよ。」

「またまた〜。」

クスクスと笑う晶に司は、ん?と眉を上げて見せた。

「―・・司兄さん、最初から灯ちゃんを本気で落とそうなんて思ってないでしょ?」

「ふむ・・・どうしてそう思うのかな?我が弟君は?」

司はテーブル横に置かれたコーヒーカップを手に取ると口元へと運んだ。

「どうしてって・・・・・そんなのモロバレって奴ですよ。どんだけ兄さんの弟をやってると思ってんの
さ。」

「ふふ・・・」

呆れるように肩をすくめて見せた晶に司は笑みをこぼした。

「まぁそこら辺は弟君のご想像にお任せしようとするかな。」

「まったく」

晶は苦笑すると手近な椅子に腰掛ける。

「でもさぁ灯ちゃんって本当可愛いよね〜。こぅぎゅ〜っとしてあげたいくらいに♪」

にこにこと笑顔で語る晶に今度は司の方が肩をすくめて見せた。

「司兄さんだってそう思うでしょ?」

「それは勿論だよ。昔と変わらず本当に愛くるしいね、灯さんは。」

この場に灯がいたら確実に赤面して金魚のように口をパクパクとさせそうなことをさらっと二人は
言ってのけた。

あの密の兄たちなのだから当然といえば当然のことなのだが・・

「-・・俺、本気で灯ちゃんのこと好きになっちゃうかもしれないなぁ〜。密には悪いけど本気でいっ
ちゃダメかなぁ〜?」

「その気持ちも分からないわけでもないがな晶-・・」

頬杖をついてにこにこと(あいつが聞いたら激怒しそうだな)そんなことを言う弟に、司は静かに
笑って見せた。

「―・・そんなことをしてしまったら一生、密に口を聞いてもらえなくなってしまうよ?」

するととても困ったような顔になって(それでも笑みは崩れなかったが)晶は開いている方の手で
頭をかいた。

「ん〜そうなんだよねぇ〜。可愛い弟にそんなことされると俺も悲しくなっちゃうしぃ。」

再びその視線を窓の外へとやるとまぶしそうに目を細め、車に乗り込む二人の姿を見つめる。

「とりあえず暖かく見守ってあげるっていうのが得策かなぁ」

「それが無難だろうな。」

カップを置くと司は再びPCへと視線を戻した。

「―・・でもやっぱり、灯ちゃんか密、どっちをとる?っていわれたら勿論」

「灯さんだろうな」

「うんv当然だよねぇ」

晶は椅子から立ち上がると出口へと向かった。
部屋を出る際、少し立ち止まって後ろを振り返る。

「―・・所で司兄さんはどっち?」

「それは応えるまでもないだろう?」

司も振り返り口元をにっと吊り上げて見せた。

「―・・勿論、俺も灯さんの味方だよ。」

「それを聞いて安心だよ。司兄さん。」

ヒラヒラと手を振って晶は司の部屋を退出する。


長い廊下をいつもより機嫌がよさそうに(鼻歌交じりで)歩きながら晶は軽い口調で小さく呟いた。


「まっ、とりあえずこの勝負はボアの勝ち・・・ってとこなのかなぁ?」



―----ラウンド3。・・・・・・ひとまず終了?