四。
目を覚ますと見たことも無い天井が視界に入った。
(あれ・・?ここどこ・・・?)
上半身を起こすとかけてあった毛布がパサリと落ちる。
その部屋はソファが二つ置いてあるだけの簡潔な部屋で、その一つに寝かされていたようだ。
「目が覚めた?」
後ろから声がかかる。振り返ると女生徒がたっていた。
(うわ・・綺麗なヒト・・・)
整った顔立ち、長いまつげ、ウェーブのかかった長い髪。
「生徒会書記の・・・高矢暁美先輩・・・?」
「えぇそうよvはじめまして麗利ちゃん。あっわたしのことは名前で呼んでね」
ニッコリと微笑まれて麗利はドキリとした。
(やっやだ・・・女の人に微笑まれてこんなにドキドキするなんて・・・それに聞いてたよりも怖い人じゃない
ような気が・・・)
と、ふと麗利はあることを思い出し、じっと暁美の瞳を見た。
あった。
滝や流と同じように"星"があった。
「どうかした?麗利ちゃん?」
「いっいえ・・只あの・・綺麗だなって・・」
「んふvありがとう」
「あのところで・・・ここは一体何処なんでしょうか?・・暁美さん」
ためらいがちに名前を呼ぶと暁美は満足げに頷いた。
「よしよし結構結構、合格よ。ここはね"生徒会”用の仮眠室よ、でこの隣が生徒会室」
「はぁ・・・」
コンコンとドアがノックされる。
「暁美さん、彼女起きたみたいだね。お茶入れたからこっち来てくれますか?」
「ありがとう雪ちゃん。麗利ちゃんとりあえず隣行きましょうか?」
「はっはい・・!」
暁美の後ろに続いて隣室へと入る。
そこには話に聞いていた生徒会役員が全員そろっていた。
「麗利ちゃん、改めて自己紹介させていただくわね」
雪がお茶を麗利の前にお茶を置く。
「初めまして麗利ちゃん。僕は生徒会書記の神川 雪。皆からは雪ちゃんって呼ばれてるからそう呼んで
もらえると嬉しいな。ちなみにクラスは2-D」
壁にもたれかかっていた(何故か右頬が赤く腫れている)流が一歩前に出る。
「改めまして俺は―・・」
「このうすらトンカチは省きましょう。はい次、裕ちゃん」
「なぜっ!?なぜ俺を省くんだぃ暁美さん!!それはいじめというやつなのではっ!?」
「誰のせいで麗利ちゃんが気絶したと思ってんのよ。馬鹿は黙ってらっしゃい」
「・・・・・・・・・・・(しくしくしく)」
「・・・・・・・・・・・・・・続けても構わんか・・?」
椅子に腰掛けていた裕がポツリと聞いてくる。
暁美は手でどうぞとうながす。
「2-A。副会長の原田 裕だ。よろしく」
「んで、最後滝君」
最初に会ったときと変わらぬ笑顔で彼はそこに立っていた。
「二日ぶり・・かな?九木本さん。俺は2-H、生徒会長榊野 滝。もう迷ったりはしてない?」
「はいおかげさまで。あの時は有難うございました」
恥ずかしくて思わず顔が真っ赤になってしまう。
深々とお辞儀をしてほてった顔を隠す。
「そう、よかった。・・・・・所で九木本さん、流からも聞いたと思うんだけど・・・入ってくれるかな・・?」
五人の視線が集まる。
「本当に流が手荒なことがしちゃったみたいで・・突然のことで驚いてると思うけど・・やっぱ駄目かな・・?」
「いえ!駄目ってわけじゃないんですよ!!生徒会に入れるだなんて他の皆からいわせれば名誉なことだ
し私だってほかの部活とかに入るよりは断然嬉しいことなんですけどっ・・・ただ・・」
「何だい?」
「本当に私みたいな一年生がはいちゃってもいいのかなぁ・・・?って・・・」
「なぁにいってんのよ麗利ちゃん!!も〜可愛いんだから〜」
朗らかに笑いながら暁美が麗利に抱きつく。
「全然OKよ!それにもし誰かにひがまれたりしていじめられでもしたらすぐに私と流にいいなさい!もう超特急
で解決してあげるから」
その言葉に反応して隅っこの方でいじけていた流がばっと立ち上がる。
「そうそう!!俺たちに任せとけって!!それに生徒会に入ればちょっとした小遣い稼ぎも出来るんだよ〜
!!」
「小遣い稼ぎ・・・?」
「そうv暁美とかの写真や私物品を生徒(主に男子)にうってみなよ!がっぽり儲かって懐暖か。お徳だらけの
生徒会に感謝すること間違いな―・・おぅっ!!!」
暁美の拳が流の鳩尾に入る。
「そんなことしてたのあんたはっっ!!!どおりでシャーペンやら鏡やらの小物系がなくなりやすいわけだわ
!!!」
「ふっ・・甘いな暁美・・・小物はいっても1万きるぐらいだが・・下着とかは万台突入するぜ・・」
「三回死んで帰ってくるなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
今度は蹴りがはいった。
ドゴォッ
激しく嫌な音を立てて流は壁に打ち付けられて撃沈した。
「ふんっ、女の敵はこうなるのよっ!!」
パンパンと手を払い暁美は清々しい顔で髪をかけあげた。
「・・・・・・・・えっと、あの喧嘩に巻き込まれないようなら入ります」
麗利の言葉に滝は力なく笑った。
「大丈夫だよ。今のところ周りの人間に被害は出てないし・・」
「今のところな」
「「・・・・・・・・・・・・・。」」
冷静な裕の突っ込みに二人は沈黙してしまう。
かくしてここに九木本 麗利の生徒会入りが何とか決まったのである。
「彼女が見つかったんだってね」
「あぁ」
ところ変わってここは、辰波学園の理事長室。
夕日が射す部屋の中、豪奢な机に肘を突きこの部屋の主である榊野 京介はふっと笑った。
「まだ奴等に彼女の存在は気付かれてはいないね?」
「今のところは。だが時間の問題だろうな。奴等も馬鹿じゃない」
「頼むよ。彼女が記憶を取り戻してないだけこちらは不利だ。心してかかってくれよ」
「わかってる」
「前はこちらが勝ったが、今回はわからない。負けるつもりは無いがその可能性だってあるんだ」
「えらく弱気だな、兄さん?」
「・・・あいつが目覚めるかもしれないとなるとね。どうも落ち着かないんだよ。それに今回は前の戦とは大きく
違う点がある」
「違う・・?」
「人の心・・・だよ」
京介は立ち上がると窓から夕日に染まる外を見渡す。
広がる街並み。
「時代とともに変化した人の心。奴等の糧となる人の魂。心が弱くなった今の人間達は絶好の餌なんだよ。そし
て時間を重ねて積み重なった負のエネルギー。前の戦よりもハードな戦いになると思うとね、しんどくて」
「大丈夫さ、きっと勝つ。そう信じていれば勝つんだよ。あきらめちゃいけない。彼女もそういってただろう?」
「そうだったな・・」
飛行機雲がみえる。
今、この時を生きるすべての輝けるものたちを壊したくない。壊させはしない。
「信じていれば・・」
必ず。
勝つ―。
大切なものを守るために。
自分自身の誇りのために。
生きるものの義務として。
戦の幕開けだ―・・
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