三。







高校生活二日目。麗利はかなり真剣に困っていた。

というかぶっちゃけめんどくさいことこの上ない。

今日は部紹介の日で嬉ことに授業は無い。

学園内を周っていろんな部活を見学するのだが・・・

(どうしよう・・・)

真面目に部活を選びたかったので一人で周ることにしたのだが・・・・なんというかまぁ・・ナンパされている。

麗利を取り囲むようにいかにも遊んでそうな上級生がニヤニヤとしながら話しかけて来た。

何処の学校にもこういった輩は必ずといっていいほどいるようだ。

「ねぇ、君新入生だよね〜?可愛いなぁ、何組?」

「部活なんてテキトーに決めちゃいなよ。それより今日暇?俺たちと遊ばねぇ?」

”帰宅部とかでこういう日は暇な人たちは新入生漁りをするから気をつけなきゃ駄目だよ!”

(あぅ・・・・奈津子ちゃんに気をつけなよって言われたばかりなのに・・・)

「あの、私友達と待ち合わせしてるんで・・」

といって男たちから逃げようとしたが尚も行く手をさえぎりしつこく食い下がってくる。

「そんなこといわずにさぁ。なんならその友達も一緒でいいからさぁ・・」

この馬鹿男共・・・

しつこい。

ブチきれそうになるのをぐっとこらえ笑顔を作り丁寧な口調で再度警告する。

「お願いですからそこをどいてください。私ちゃんと部活見て周りたいんで」

「お〜”お願い”だってよ〜、可愛いねぇ」

「じゃぁ俺たちのお願いも聞いてくれたら通してあげる。だからちょっと付き合えよ」

男の一人が麗利の腕を掴む。

「きゃっ!ちょっとなにするんですかっ!!離してくださいっ!!」

「こら!暴れるなっての!!いいからおとなしく付き合えよ!!」

数人がかりで押さえ込まれひっぱられる。

「離して!!やだってば!!」

こんのぉー・・・

我慢の限界だ。どうやらこの馬鹿男タチには言葉が通用しないらしい。

しょうがないこうなったら−・・とぎゅっと拳に力を入れた。

その時だ。

「こらこらそこの青少年たち。無理矢理は行かんぞ無理やりは」

声がした。

下から。

「きゃあっ!!」

麗利たちを見上げるように一人の男子学生が座り込んでいた。

よいしょっという親父臭い声を出して彼は立ち上がる。中々の長身だ。180は越えているだろうか・・

茶髪に、右耳の三個付いてる灰色のピアスが特徴的なその男はにっと人の良い笑顔を向けてきた。

「「こっ小島先輩!?」」

げっという感じで男たちがその男の名前を呼ぶ。

(小島・・・?あっ生徒会書記の・・・)

「で?お前ら何してんの?出方によっちゃ俺も容赦しないけど?」

笑顔で指をポキポキならしている小島に男たちの顔から血の気が引いていった。

「いっいえそんな・・」

「おっ俺たちはただこの子を案内してやろうかなぁって・・思っただけで・・」

「そっそうそう。別にやましいことなんか一つもしてないですよっ・・・!!しっ失礼しました!!」

180度回転し男たちは脱兎の如く逃げだした。

「ふむ一件落着・・」

(助かった・・・)

ほっと麗利は胸をなでおろす。

御礼を言おうとして小島の顔を―・・

(あれ・・・・?)

小島の目と目が合った瞬間。

その瞳の中に・・

星が・・・・

「大丈夫だった?麗利ちゃん」

「あっ・・・」

現実に引き戻される。

「?どうかした?」

「いっいえ・・!!あのどうもありがとうございました!!・・・・・・・てアレ?」

私名前言ったっけ?

「あの・・なんで私の名前を・・・?」

「さぁ?何ででしょう?」

小島は意地悪く笑って見せる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もしかして生徒会長から・・・?」

「ぴんぽ〜ん!!大正解!ここ広いけど学園内で迷ったって離し聞いたことが無かったから。一昨日は君

の話で大盛り上がりだったよ、はははははっ」

・・・・・恥ずかしい。穴があったら入りたい。

麗利は頬が赤くなっていくのを感じた。

「でも九木本さんやっぱ俺の想像していたとおり可愛いんだもんなぁ。超ラッキー!!でさっ九木本さん、まだ

部活とか決めてないよね?」

「えっ・・?あ〜・・はい・・」

「俺たちのとここない?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

情報がいまいち整理出来なかった。

「今・・・・何と・・?

「だ・か・ら!俺たち"生徒会”に入らないか?って聞いてるの♪どう?」

「いや、どうって・・・?えぇ!?」

突然の勧誘にパニック状態に陥った。

「麗利ちゃんって入試のとき点数上位だったし、先生に聞いたんだけど実家が空手道場で運動神経もいいで

しょ?それに可愛いし。俺たちとしては是非とも九木本さんを”生徒会”に欲しいわけよ。あっそんなに仕事は大

変じゃないから。絶対他所の部活に入るよりはうちきたほうがいいって!ねっ!駄目かな・・・?」

一気にまくし立てられて考える暇さえない。

「あっいやっ駄目って事はないんですけど・・・」

「ということはOK!!ってことだね!!よしっ!!全は急げ!生徒会室に直行!!」

「ふぇ!?」

麗利の手を引っ張り小島は勢いよく駆け出す。

「え?いや・・・ちょっ先輩!?」

麗利の言葉など聞こえていないようだ。

建物の中に入るとそのまま階段を登っていく。

(まだ入るとも言ってないのにぃぃ!!!)

「ちょっ・・・小島先パ―・・きゃっ!?」

階段で躓く。

(うわっ崩れる!?)

突然のことに片手もふさがっていているため対処できない。

階段の角が眼前に迫る。

あたったら痛いんだろうな何てことを呑気に考えながら思わずぎゅっと目を瞑る。

しかしその瞬間世界が逆転した。

「あれ・・・・?」

「ふーあぶねーあぶねー。ごめんね麗利ちゃん、ちょい飛ばしすぎたわ」

目の前には小島の顔。

「え・・・・・・・?」

この態勢はもしかしなくてももしかして・・・・・・・・・・

(ぉぉぉぉぉおお姫様抱っこぉぉぉぉぉ!?)

ぶつかる寸前に小島は麗利を抱き上げたらしい。

何という瞬発力と腕力だろう。とても人間業とは思えない・・・

しかしそれにしても―・・この格好は恥ずかしい・・・・

「あっあの先輩!?降ろしてくだ―・・」

「よっし!めんどくさいからこのままいっちまうか!!しっかりつかまっててね♪」

「えぇ!?きゃっ!!」

小島の首にしがみつく。

「ん〜っ麗利ちゃん良い匂いするね〜vよっと!!」

小島が階段を上がるたびに激しい揺れが麗利を襲う。

目が回りそうだ。少し気落ち悪い。

段々と意識が遠のいてくる。

(人生何があるかわかったもんじゃないとはこのことのような気がするわ。うっ・・・・)













生徒会長である榊野 滝は朝から仕事に追われていた。

ふとペンをとめ時計を見ると時刻は丁度正午。

(一段落するか・・・)

滝は立ち上がると生徒会室専用の冷蔵庫をあける。

「裕と雪は何が良い?飲み物」

来年度の予算案をまとめていた神川 雪はその可愛らしい顔を上げる。

「僕はオレンジジュースがいいな♪確か奥の方にチョコレートがあったと思うんだけど・・・」

「私は自分で入れる」

その横で仕事をしていた原田 裕はそういってたちあがるとこぽこぽと日本茶を入れ始めた。

「俺は何にしようかな・・・?ん〜・・コーヒーでいいや」

ふと滝は顔を上げる。

「・・・・暁美は紅茶でいいか。」

ガチャ。

生徒会室のドアが開く。

「やっほー!!皆、お昼持ってきてあげたわよ!!」

「暁美さんありがとうv」

「雪ちゃんはおそばでよかったわよね?あっそうそう滝君、朗報よ。」

「何だい?はい紅茶。」

「あらありがと。あーおいしーvあのね流が”麗利ちゃん見つけたから勧誘してくる”だって」

そこへお茶を入れた裕が入ってくる。

「大丈夫なのか?あいつにやらせて。物凄く不安なのだが・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。大丈夫よ」

「今の沈黙は一体なんだ?」

「・・・・・・・あはっ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(溜息)」

裕はそれ以上は何も言わずに暁美の持ってきた昼飯を食べ始めた。

(どうなることやら・・)

滝は心の中で一人呟いた。

すると。

「あら?流が戻ってきたみたいね」

流の気配を感じた暁美が顔を上げる。

「・・・・・・・・ともう一人いるわ。彼女ね!流やるじゃない」

廊下に足音が響く。

どんどんと近づいてきたそれの音は生徒会室前で止まるとドアを思い切り開け放った。

「たっだいまー!!麗利ちゃん確保してきたよ〜!!!・・・・・ってあれ?どうしたの?」

眉間に青筋を浮かべフルフルと拳を握る暁美に流はキョトンとする。

「・・・・・・・・あんたは何やってんのよぉ!!!!!!!」

「・・・・・・・何って・・・・・?」

本気でわからない流に裕が一言言い放った。

「”お姫様抱っこ"の上に気絶させてどうする」

この時初めて麗利が気絶していることに流は気付きそして怒りの鉄拳をその右頬にくらうことになるのであった・・・