〜嘘つきな王子様〜





その日、図書室にいくとありえないことがおこった。

「お前、そろそろ下僕から解放してやろうか?」

あまりにも唐突に、あまりにもサラリといわれたもんだからワンテンポ

反応が遅れてしまったが

「本当ですか!?−・・ぁでっ!!!」

机に飛び乗る勢いで先輩につめよったら案の定たたかれた。

しかも本の角でだ。マジで痛い。

「っっっっっっっっっ」

「本当だって言ったらどうする?」

人の痛みなぞはお構いなし−・・いやいや、んなことこの際おいてお

こう。

「っっっっっっっごく嬉しいです!!歓喜乱舞ですよ!!」

「・・・・・・・・・・・・踊るのか?」

んなわけないじゃないですかー。といったらまたたたかれた。

「うぅっ」

「まぁそうだな・・・俺の言うこと一つ聞いたら解放してやらんこともな

い」

むっ。なんだかキナ臭い匂いがプンプンするが・・・

「わっわかりました!!何ですか?」

痛いのとかきそうだけど。ものすっごく痛いのとかきそうだけどでもそ

れでこの脅迫下僕ライフが終わるのなら・・・

「俺にキスしてみろ。」

「わかりました!!」

よっしこれさえおわればやっと私の人生まともに・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

思考停止。完全フリーズ。

「だーかーらー。俺にキスしてみろってんの。あっ、ほっぺとかなしな。

ここにだぞー」

にやにやとにやけながら先輩が指すのはその口び・・・

「はぁあああああああああああああああ!!??」

一気に私の顔が茹で上がった。

「んな!?ななななななななななななんでそんなことをっ!?」

「一つ聞くっていったじゃん。」

「いや!でもそれは!!」

「キス一つで解放だぞー?しかも相手はこの俺だ。なんて役得なん

だろうなー。どうしたー?できんのかー?」

役得かどうかは別にして(だって本性知る前ならいざしらず)天秤に

かけるにしては・・・・・・解放されたい!!けど・・むむっ

「出し惜しみするもんでもないだろうが。」

「いやいや、するもんですって」

「何?ファーストキスだったりするわけ〜?うっわ〜」

「ちがいます!チューの一つや二つしたことありますよ!!」

まったく失礼な。そりゃしばらく縁遠い話だが中学の頃はちゃんと彼

氏だっていたんだから。

「へー。」

そうよ!何も初めてってわけじゃないんだしこんなの犬にでも舐めら

れたとでも思えば・・・・

「ちなみにディープでな」

「ぎゃあああああああああああああ!!!!!」

私の絶叫が室内にこだまする。

「無理!すいません無理です!!」

「おまえ・・・何もそんな涙ぐんで断らなくてもいいだろうが。」

べしっ。脳天に本が直撃する。

「だって!!だって深いんですよ!?ベロチューですよ!?」

「ベロチューって・・・・今いうかぁ?」

「ムリムリ絶対ムリです!!!あぁっでも奴隷解放への道がぁっ・・・

他にないんですか!?」

「ない」

あっさりきっぱりと告げられた言葉に私は断崖絶壁に立たされた気分

だ。まさに・・そう。先輩と出会った最初の頃を髣髴とさせるぐらいの衝撃

なのだ。

うがー!!この世の終わりだー!!もうどうすればいいんだー!・・・・・

なんて一人悶絶していると

「悩むだけ悩め。・・・・・・・まぁどっちみち嘘だから徒労に終わるだろうけ

どな。」

「そう嘘・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・な”っ!?」

この男、今なんてった?うそ?ウソ?嘘ぉおおおおお!?

ワナワナと震える私に先輩はお決まりの満面の笑顔で

「エイプリルフールだし。」

と、いいくさりやがった。

「それは4/1!!もう一週間も前の話です!!」

「ほら俺、一応生徒会の仕事やってるわけだし?入学式の準備やらなん

やらでその日お前からかう暇なかっただろ?」

そうなのだこの男。お得意の猫かぶりで生徒会副会長なんぞをやってた

りする。

春休みの間、ことあるごとに人の事呼びつけておいてさんざんいじりまく

ったくせに・・・・っっ。まだ足りないというのこいつは!!!

「だから今日が俺的エイプリルフールの日。つい10分前に決めた」

「んなもん決めなくてもいいです!!迷惑な!!」」

おのれ高倉!!人の希望と苦悩をけちょんけちょんに踏みにじりやがっ

てっっっ!!!!!

「いやー、しっかし楽しませてもらったなー。お前相変わらずリアクション

良すぎ。-・・で、だ。」

と、馬鹿笑いしていた先輩の顔が急に真面目になり・・・・・・・・・・・・

「へ?」

にんまりとその口端がつりあがっていく。・・・・・・・・まさに悪魔の笑み。

まずい。

「ぎゃっ」

と思ったときには既に遅く。がっしりと頭を鷲掴みされてしまう。

「校内一モテるイイ男NO1なこの俺に対してあの決断の遅さ、かつ断りを

いれてくるとはいい度胸だなぁ・・・なぁ?カーエーちゃぁーんー?」

「校内一イイ男はそんなヤクザまがいの極悪ヅラなんてしませ・・ギャー

ーーーー!!!いたい!!割れる!!でる!中身が出る!!!」




                    * 




そのあと二時間。

みっちりきっちりお説教という名の拷問と、罰則という名の個人用法漏洩

・・・もとい、赤裸々な初恋話をさせられた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・エイプリルフールなんて大嫌いだ。







モドル    Novelmenu   ススム