『死ぬこと』

空が曇っています。
今にも雨が降り出しそうなその天気の元、私は家路を歩いて
いました。
買出しです。
市場で買った食糧をリュックサックに詰め背負っている。
右手にはお気に入りの赤いくまのぬいぐるみ。
この街を一人で出歩くのは(大の大人でも)危険ですが私にと
ってはそうたいしたことではない。
前も一度襲われた事がありましたが手足に一発ずつ撃ち
こんで相手を黙らせた。
侑悟にはあまり仕事以外では殺すなといわれているので、
殺しはしないけど・・
そういえば。
侑悟は私とであったとき沢山の大人を邪魔だからといって
殺したのではなかったか?と聞いたことがあった。

「あの時はまだ若かったんだよ。」

と彼はばつが悪そうに頭をかいた・・という記憶がある。

ぽつりと。
鼻に水滴が垂れてきた。

ぽつりぽつり。

思わず上を見上げると雲の黒さが増し、雨が降り始めてきま
した。
雨は嫌いではないが濡れると後が大変なので走る。
家はもう目と鼻の先だ。
家がある朽ちたビルに入り、暗い階段を上る。
剥き出しのコンクリートがひんやりとしている。
階段を三回分上がると鉄の扉が姿を現す。
鍵を開けて中に入ろうとして―・・私は動きを止めた。
微かに開けた家の中から・・・かぎなれた複数の匂いがした。

硝煙と・・埃と・・そして・・血の匂い。

くまのぬいぐるみに仕込んであった銃を取り出し扉の中に体を
すべりこませます。
電灯がわれ、明かりはついていない。
廊下に散らばったガラスを踏んで音を立てないように慎重に進
んでいく。
薄暗い部屋。
壁には弾痕のあとが無数にあった。
廊下には見覚えのない男達の死体が三体。
奥に進むと更に二体。

(侑悟は・・?)

幸いながらにもその死体の中には侑悟の死体は見つかりません。

「・・・・・・・・織・・か・・・?」

「侑悟っ!?」

声がした方を見ると台所の置くから侑悟が姿を現しました。
その姿はあまりにも悲惨で・・
所々銃弾を受けた後があります。

「何が・・・・?」

侑悟はくしゃりと私の頭をなでました。

「安心しろ。対した傷じゃないさ。狙撃手がいてな。向かいのビルか
ら撃てきやがった。そいつに撃たれた傷だけだ。」

だが傷口からは血があふれている。

「手当て・・しないと。」

「いや・・いい。」

そういって私の手を止めました。

「それよりおまえさっさと逃げろ。」

「え・・・?」

「聞こえないか?」

言われ、耳を澄まします。
ビルのしたに車が止まる音。
無数の足音。

「新手・・・」

「行け。」

肩を押され台所へと連れて行かれる。

「でもっ・・」

「大丈夫だ。俺はまだ殺されない。」

冷蔵庫をあけ底を開ける。

「あいつらが狙ってるのは多分"倉庫"だ。」

倉庫。
そこには侑悟が隠し持っている沢山の武器と今まで稼いだ金がお
いてある。

「場所をわらせるまで生かしてもらえるさ。」

「でも侑悟・・」

「早く行けっ!」

侑悟が本気で怒っている。
だって・・・目がとても真剣・・

「お前は・・生きたいんだろ?」

そういって侑悟は私を押し、冷蔵庫の下に隠されている通路へと
落とした。

あぁ・・何で・・・・


何でそんな泣きそうな顔で笑っているの・・・?侑悟・・・