『あなたの気持ち』

侑悟にいわせると私は"殺し"に向いているらしい。
侑悟と一緒に住んで・・殺し屋の仕事を教えてもらって。
何度目かの仕事が終わったときに彼に言われた事がある。

「お前・・本当に何も感じないのな・・」

何を感じろというのでしょうか?

”死”にたいして私は無感動なのだという。
殺しても何も感じない。
何も思わない。
”死”に対しての気持ちが何もないのだそうだ。

前に一度。
侑悟に尋ねたことがある。

では、侑悟は誰かを殺すたびに何か感じるのか?

と。
侑悟は別に・・と応えた。

「仕事だからな。今はもう何も感じないさ。」

”今は”ということは前は感じていたのでしょうか・・?

侑悟がこの仕事を始めたのは―・・始めて人を殺したのは
8歳の時だと聞いた。
侑悟は生まれもこの暗黒街なのだそうだ。
捨て子で・・
拾ったのがこの街で今の侑悟と同じように”殺し屋”をしてい
た人だったそうだ。
私よりも小さいときから”殺し”を叩き込まれて。

彼が始めて誰かを殺したとき・・”何か”を感じたのでしょうか?

その感情とは一体?

死への哀れみでしょうか?

死への恐怖でしょうか?

死への愉悦でしょうか?

死への快感でしょうか?



ここで生きていくためには必要なことなのだ。

ご飯を食べるたびに何か感情をもたなければいけませんか?

空気を吸うたびに何か感じなければいけませんか?


私にとって”殺す”ということは生活の一部なんです。

だから”死”にも何も感じないのでしょう。


それが私なんです。


侑悟・・・あなたは一体”何”を感じていたんでしょうか・・?

そして今でも"何か"を感じているのでしょうか?


もし私が死んだら・・

あなたは”何か”を感じてくれるのでしょうか・・?