11.

ガシャンッ―・・

「きゃっ!?ちょっ・・麗利ちゃん大丈夫!?」

「えっ?あっ・・うわぁぁぁ!?あぁぁぁぁすいませんっすいませんっ!!!!」

麗利は落としてしまったコップの欠片をぱっぱっと拾っていく。

「っもう!一体どうしちゃったの?虫でもいた?」

苦笑気味に暁美が尋ねるが、麗利の顔が蒼白になっているのに気付き身をこわばらせる。

「どうしたの・・・?」

「いえ・・只・・」

「只・・・・?」

麗利は自分自身の手が―・・体が小刻みに震えていることに気付かない。

「今・・物凄く・・嫌な感じが・・・凄く・・・凄く怖いものが近くをとおった様な・・気がし・・て・・・」

「麗利ちゃん?」

その声までもが震えている。

そしてそれは段段と小さくなり麗利の顔は更に俯いていく。

「ねぇ?大丈夫?麗利―・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・め・・・・・・だめよっ・・・」

「え・・?」

「緑妃っ!!」

麗利が顔を上げ暁美の肩を掴んだ。

「鈴・・鬼那・・!?」

「彼がっ・・・彼が黄泉還るわっ・・・・・・」

カタカタと震え、悲しみを瞳に写し嘆く鈴鬼那がそこにいた。

「彼が・・・妖王が復活するっ・・・・感じるのっ・・!彼の気が・・満ちているわっ!!」

暁美はそれを聴き終わらないうちに、携帯電話を取り出した。

「もしもし、京介さん?今、麗利ちゃんが―・・っ」

震えが止まらず。

自分の肩を強く抱きしめ―・・泣いた。

「先輩・・・・・・滝先輩・・来て・・・・っ」

―・・雷寿っ!!







 
                            *







暗く湿った城内に”まるで背筋が凍るような”という表現が適切だと思われる冷たい風が吹いた。

城の最も奥にあり、妖の者達の王が眠る大きな部屋。

その部屋の入り口とは反対に位置する更に奥に王は眠る。

その寝所を―・・空白の玉座とそれを守る御簾を隠すように幾重にも天井から垂らされた漆黒

の布が奥から吹く気の風によって激しく舞い踊った。

やがてそれも止み部屋には沈黙が再び訪れる。

と、部屋の入り口から少し入ったところにいつの間にか現れた四つの影が玉座に向かって跪

いていた。

「―・・長らくのご帰還。心よりお待ち申し上げておりました」

琥珀が先陣を切って口を開く。

「―・・妖王様」

オオオオオオオオオォォォオオオオオオオオオォオオオオオォオォォォォ-----・・

歓喜の雄叫びのような風が今一度吹き荒れた。

『・・・・・・長らく待たせた』

御簾の中から声がした。

地の底から響くような・・・いちど聴けば二度と忘れる事のない低い声が響いた。

『今一度・・覇権を我が手に取り戻そうぞ・・』

「そのための首尾は既に整っております」

貴叉が頭を垂れて申し立てる。

「我等、妖王様の命をお待ちしておりました」

続いて刹那が言葉を引き継ぐ。

「どうか我等に御命令を。我が君」

霧人の最後の言葉で皆が頭をあげ妖王のいる玉座に熱い視線を送る。

『時は来た―・・』

声は城内だけでなく闇の世界に全土に響き、全ての妖の者達に届く。

『再び世を我等が闇で覆いつくすためにも動くがよい。己が欲のために!そして我がために、

奪うがいい!!』

ウォォオォォォオオオオオオオォオオォオォオオオオオオオオ-------!!!!!!

闇全体が歓喜に震える。

「妖王様」

刹那が一歩前へと進み出る。

「必ずやその命を実行いたしましょう。そして御方を御前にお連れ致しますことを誓約いたします」

四天王が声をそろえた。

「「神魔の巫女、必ずや妖王様の元に」」

『行け』

「「はっ―・・」」

闇が蠢いた。

妖王は一人玉座から立ち上がるとぎりっと歯を噛んだ。

胸元を少しはだけさせると心の臓の所に傷跡がある。

雷寿に刺された胸の痛み。

新たな器にうつってもその傷跡は浮かび時折ズキズキ痛み出す。

そしてそれは妖王に怒りの感情を思い出させるのであった。

『必ずや我が願い・・・・・・・成就させてくれようぞ』

見ているがいい愚かなる鬼狩りの一族よ。

―・・”今”が真なる戦の始まりだ。










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これにて二章は終了です。
長々とすいません・・・でもまだまだ続きます(爆)
三章のほうはすぐにUPできると思いますが・・・・・
でもその前にリクエストがあった鬼狩りの外伝をUPしたいと思います。
ここまでお読み頂き真にありがとうございましたm(_ _)m
 
     
                                              墺離 拝