〜ご訪問〜
「やぁ郁、久しぶり。」
玄関を開けるとにこやかな笑顔が視界に飛び込んでくる。
久しぶりも何もつい一週間前にもあったような気がするのは気のせいだろうか・・・?
「いらっしゃい、雅人。どうぞ入ってくれ・・・・ん?」
と、その腕に抱きかかえられている白い布に目線を落とす。
その白い布の合間からすやすやと寝息が聞こえてくる。
「あぁ・・密君だっけ?今日はこの子連れてきたのかい?」
「そう。先月生まれたばっかだよ。―・・と、密だけじゃないよ。」
ひょこりと雅人の後ろから二つの小さな影が顔をのぞかせる。
「いくおじさんおひさしぶりです。」
「おひさしぶりでっす。」
「久しぶりだね、司君、晶君。暫く見ないうちに大きくなったね〜。」
こちらは雅人と違って本当に久しぶりだ。
確か司君は8歳で、晶君は5歳になったはずだ。
(うぅむ・・・本当に子供って言うのは成長が早いなぁ・・)
郁はしみじみと感じ入ってしまう。
なんていったってもうすぐ自分も父親になるのだから・・
*
「あら、いらっしゃい。外、寒くなかった?まだ冷えるでしょう。」
雅人親子をおなかの大きくなった由佳が出迎える。
「あらあら、司ちゃんに晶ちゃん大きくなったわねぇ。こっちへいらっしゃい。いまココア
入れてあげるから。」
「ありがとうございます、ゆかおばさん。」
「わーい!ココアー!!」
子供達は嬉しそうにはしゃぐと一目散に由佳のもとへと走っていった。
「いやぁ、元気だなぁ。―・・それにしても本当にお前にそっくりだよ。さぞもてるんだろうねぇ・・」
「勿論。俺の子供だから当然さ。」
当たり前だろ。と至極真面目な顔で返す雅人に本当に相変わらずな奴だ・・と思わずにはいられ
ない郁だった。
「雅人さんもこっちへいらっしゃいよ。」
「やぁ由佳ちゃん。どう?調子は?」
勧められるがままに雅人は郁とともにソファに腰を下ろす。
ココアとコーヒーを持ってきた由佳はテーブルの上にそれを並べるとにこにことしながら反対の子
供達と同じソファに座る。
「えぇ、順調よ。今丁度八ヶ月目なの。」
「最近じゃ良く動くようになってね。元気な子が生まれそうだよ。」
「ねぇねぇ!ゆかおばさんさわってみてもいい!?」
「こら、しょう。」
身を乗り出す晶を司が軽くたしなめる。
「ふふ・・いいのよ。優しく触ってあげてね、晶ちゃん。司ちゃんもいいわよ?」
「わ〜い!!」
「すっすいません・・」
晶は嬉々として、司はおそるおそる由佳のお腹に手を伸ばした。
「すご〜い・・おっきぃねぇ〜。」
「あっ今うごいた・・」
「えっほんとうっ!?」
「お腹に耳付けてみなさい。心臓の音が聞こえると思うから。」
由佳のお腹にへばりつくように子供達は耳を当てる。
「ほんとうだっ!!とくんとくんいってる〜!!」
「わぁ・・」
二人とも目をキラキラと輝かせている。
そんな子供達の様子に郁も顔を緩める。
「性別は生まれてくるまでのお楽しみってことにしてるんだ。楽しみだなぁ」
「―・・女の子だよ。」
その横で密をあやしていた雅人がにっこりと断言した。
「・・・・・・・なんでそう分かるんだよ。」
「だって僕の所は三人とも男の子だったからね。」
「お前なぁ・・」
「え?何の話、二人とも?」
「あ〜!なっなんでもないんだよ由佳っ!」
多少慌てた様子の郁を横目で見ながらクスクスと笑った雅人は、密を抱いたままソファをたった。
「俺も触ってみてもいいかな?後、この子も。」
「えぇ、いいわよ。」
由佳の横に移動し、すやすやと眠る密をそのお腹にそっと近づける。
雅人もそのお腹に片手をそっとあてる・・・と僅かに振動が伝わってくる。
「―・・うん。元気な女の子が生まれるよ。」
「えぇ?本当に?」
驚く由佳に雅人はお馴染みの笑みでもう一度頷いた。
「うん、間違いないね。」
―・・というか、女の子じゃなきゃこっちが困るしねぇ。
・・・・とかなんて心の中で思ったのはここだけの話。