私の名前はセス・ローランド。 魔界東方軍副将軍に従事している。 家族や周りからは女の身ながら軍人などと陰口を叩かれる事もあるが 耳を貸すつもりは毛頭ない。それがどうしたと鼻で笑って返してやること さえある。 私はこの軍人という職業に誇りをもっている。 生きがいといってもいいだろう。できれば生涯現役でいたいものだ。 そんな私が席をおいている東方軍はよそに比べて男尊女卑というものが 少ない。血統すら重視されないのだ−・・実力さえあれば誰でも上へと いくことができる。 それもこれも東方軍の頂点に立つリーシェ将軍のおかげであると私は認 識している。 あの方は私の憧れだ−・・いや、私に限ったことではないだろう。 男も女も、東方軍の中であの方に心酔していないものは皆無といっていい。 才色兼備で人望厚く、常に微笑を絶やさない麗人。 周りに気を使いすぎて自分のことを二の次にしがちな面に時々はらはらと させられることもあるが、それもあの方の利点なのだろう。 最高の職場に最高の上司。部下にも恵まれ私の生活はとても充実している といっても過言ではない。 ・・・・・・のだが 最近、心配事が一つある。 リーシェ将軍のことだ。 経緯はどうあれ無事分化され、立派な女性になった将軍だがそれによって 一つ浮上してきた問題がある。 前々から将軍に憧れを抱くものは多かったのだがいざ行動に移そうとする ものは少なかった(中には命知らずなものもいたがもちろん私が潰しておいた) −・・しかしここ最近私一人では対処しきれないほどにその数が圧倒的に増え 始めている。 日々増えつつある贈り物に将軍自身も困惑されている始末だ。 このままでは私の目の届かない隙を突いて捨て身の覚悟で将軍にじかに突撃 してくるものも増えてくるかもしれない。 困った。いっそのことみせしめに誰か一人犠牲になってもらってもらうしかないだ ろうか・・・そう考えあぐねていた矢先のことだ。 私は書類整理の資料探しのため城の書庫を訪れた。 広い書庫は一般閲覧用の区画と、少し奥まったところに扉一つで仕切られた 重要書類などを保管してある特別室がある。 滅多に人がよりつかない場所だがその中に目的の本があったのでそこまで足を 向ける。 途中、何人かとすれ違ったが何故だか皆"おっかない"だの"あれじゃ近づけな い"だのと口にしている。 何のことだろうか?と首を傾げていると目的の場所で意外な人物と遭遇した。 西方将軍だ。なぜか中に入るわけでもなく特別室の扉に寄りかかるようにして たっている。 近づくと向こうも気づいたのか少しバツが悪そうな顔をして道を譲ってくれた。 その時彼は「無用心だといっておけ」と言い残して去っていったが、中をのぞいて あぁなるほどと私は納得する。 特別室におかれた机の上に資料を広げたまま、将軍が転寝をしていたのだ。 私はあまり彼が好きではなかったのだが−・・少し安心した。 害虫駆除の協力者は一人でも多いほうがいい。 きっと彼にとっても害虫は少ないほうがいいのだろう−・・というかむしろ壊滅させ たいぐらいの気持ちではなかろうか。 そう思うと少し笑えてくる、と同時に中々その手のことに関しては疎い上司のこと を思うとこれから先、私以上の苦労をしいられそうな彼には少し同情してあげても いいかもしれない。 |
セス・ローランドの目撃談。