僕の彼女は絵に描いたようなお人よしだ
他人を疑うことなんてきっとしたこともないのだろう。
困っている人を見ればすぐに飛びつくし、頼み事は断れない。
いつもふわふわにこにこしてて危なっかしいったらありゃしない。
だから僕が守ってあげなきゃいけないんだ。
「セイちゃんは心配性ね。」
出掛け様とした彼女についていこうとする僕に彼女は苦笑して言うが
少しはこちらの身にもなってほしい。
いつもハラハラドキドキさせられているのは僕なんだから。
「ついてこなくても大丈夫よ。ご近所さんだし。ちゃんと一人で行ける
から」
だめだめ、絶対にだめだ。
彼女の方向音痴をなめてもらっちゃこまる。自覚がないからなお悪い。
僕が頑なに拒むと彼女はしょうがないわね、と折れた。
その困ったような笑顔も可愛い。蕩けてしまいそうで大好きだ。
だからこそ僕は身を挺してでも彼女を守らなきゃいけない。
この笑顔にほだされて近づこうとする害虫はそこら中にいるのだから−・・
と、進行方向からやってくる人影−・・害虫その1だ。
随分とはなれてはいるが僕の目はそいつをとらえるとキラーンと光った。
「ハル!」
来たなウジ虫。っていうか気安く彼女の名前を呼ぶんじゃない。
「遅いから迎えにきた・・・んだけど・・・・」
満面の笑顔で近づいてきたそいつは僕の姿を視界に入れるとその顔を
若干ひきつらせた。
こっち見んな。腐る。
「・・・・・なんでそいつもいるわけ?」
ふふん、いたら悪いかこのウジ虫め。お前の魂胆なぞお見通しなんだよ。
「セイちゃんったらついてくるってきかなくって・・ごめんね?」
「えっいや別にいいんだよ!ハルのせいじゃないし!!」
そうだそうだ。何、謝らせてんだよ。
悪いのはぜーーーーーんぶお前のせい。折角の休日に彼女を誘うお前
が悪い。
僕はふんっと鼻で笑ってやる。
もちろん彼女に気付かれないように。ウジ虫は馬鹿なりに気付いたのか
ぐぅっと悔しそうに眉をひそめた。
頬がひきつってるぞ。けっザマアミロ。
ボサっとつったってないでさっさと案内しろこのボケ。
「じゃ・・じゃいこうか・・」
「うん」
僕の目が黒いうちは二人きりになんてなれると思うなよ。
*
俺の彼女はお人よしだ。
いつもにこにこふわふわしてて見てるこっちがハラハラさせられる。
まぁそんなとこが可愛いんだけど・・・
今日も俺のうちに遊びに来る彼女を心待ちにしていたが時間になっても
こないので、迷子になったのではないかと(歩いて5分とかからない程、
近所なのだが・・)心配になり迎えにいけば道の向こうから歩いてくる彼
女。
よかった・・・と思ったのもつかの間。俺はその腕の中にすっぽりと収まっ
ている奴に顔を引き攣らせた。
俺はこいつが苦手だ。彼女のことを守ってくれているのだろうがいつもい
つも俺と彼女の間を邪魔してくる。
どうやら俺はまだ認められていないようで・・・
あっ!!!こいつ今人のこと鼻で笑いやがった!!
ひくひくと自分の頬が引き攣るのがわかる。
「ニャァ!!」
早くしろとでもいわんばかりに強く鳴いた奴に促され俺と彼女は歩き出し
た。
奴がいる限り俺は一生彼女と二人きりになれないんじゃないか・・・
つくづくそう思う毎日だ。